中和反応など、酸・塩基(アルカリ)の関係を知り尽くすと、たくさんの化合物を合成することができます。では、酸や塩基を買えないとき、これらの物質はどのように手に入れればよいのでしょうか。まず、ここでは塩基の入手方法について考えてみましょう。
第一に、植物を原料とすることで、いくつかのアルカリを手に入れることができます。植物にはミネラルが含まれており、これらを燃焼すると、炭酸塩という形でアルカリを入手できるのです。実際に、アルカリとは、「灰」を意味するアラビア語に起因する用語です。木材はカリウムを多く含むため、木材を燃焼した灰の水溶液からは炭酸カリウムが得られますし、海藻はナトリウムが豊富なため、海藻を燃焼した灰の水溶液からは炭酸ナトリウムが得られます。
また、貝殻や珊瑚といった生き物のカラダや石灰岩は、主に炭酸カルシウム(石灰)で構成されています。これらを加熱すると、炭酸カルシウムから二酸化炭素が脱離していき、酸化カルシウム(生石灰)が得られます。さらに生石灰を水に溶解すると、消石灰(水酸化カルシウム)が得られ、これは炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムよりも強いアルカリ性を示す物質です。
そして、これまで得たアルカリ性の物質を材料とすることで、現在、最も有名なアルカリ性物質と思われる水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが得られます。つまり、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムに対して水酸化カルシウムを加えると、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが得られるのです。
塩基を利用すると、身近な物質から石けんを作ることができます。そのために必要となるものが、動物等から取れる油脂です。油脂はトリグリセリドとも呼ばれており、グリセリンに脂肪酸が結合してできています。油脂に塩基を反応させると、グリセリン部分と脂肪酸部分の結合が加水分解を受けて、脂肪酸の塩とグリセリンが得られます。
このうち、石けんとなるのは脂肪酸の塩です。脂肪酸の塩は、炭素が連続した非イオン性の部分と、金属イオンがくっついたイオン性の部分持っています。正電荷になりやすい水素原子と負電荷になりやすい酸素原子で構成される水は電荷の偏りが大きいため、脂肪酸塩のイオン性部分とよく馴染みます。反対に、水と親和性が低い「油」は、電荷の偏りに乏しいため、脂肪酸塩の非イオン性部分と高い親和性を示します。その結果、脂肪酸塩は水とも油とも良く馴染み、両者の間に入り込んで混合を促進する作用を示します(界面活性作用)。ただし、水酸化カルシウムで加水分解を行うと、得られる脂肪酸カルシウム塩は不溶性であるため、石けんには適しません。